日本の縄文時代は、およそ1万年以上も続いた世界的に見ても非常に長い時代です。狩
猟・採集を基盤にしながらも、漆や土器、石器といった独自の文化を築き上げた縄文人の暮らしは、現代人にとって多くの発見を与えてくれます。
岐阜県高山市久々野町にある堂之上遺跡（どうのうえいせき）は、縄文人の生活の痕跡が残る重要な遺跡です。
竪穴住居跡や出土した縄文土器などを通じて、当時の人々の生活を垣間見ることができ、地域の歴史や文化を理解するうえで欠かせない存在となっています。
この記事では、堂之上遺跡の歴史的価値、見どころ、観光情報、さらに周辺エリアの魅力について詳しく紹介します。
堂之上遺跡の概要
堂之上遺跡とは？その位置と歴史的背景
堂之上遺跡は岐阜県飛騨地方の南部に位置し、飛騨川沿いの豊かな自然環境に囲まれています。
縄文時代中期から後期（約4,000〜3,000年前）にかけての人々の営みが確認されており、飛騨地域における縄文文化の中心的な遺跡と考えられています。
この地域は森林資源や水資源に恵まれており、狩猟や漁労、木の実の採集が盛んに行われていたと推測されています。
また、縄文時代後期には農耕の痕跡も見られることから、狩猟採集と農耕を組み合わせた生活が営まれていた可能性があります。
縄文時代の集落と堂之上遺跡の関係
発掘調査によって竪穴住居跡や貯蔵穴が確認されており、定住生活を送る集落が形成されていたことが分かります。
これらの住居跡は集落内で一定の秩序をもって配置されており、縄文人が共同体を形成して暮らしていたことを示しています。
また、土器の文様や出土した石器の種類からは、周辺地域との交流もあったことが明らかになっています。
飛騨地方に住む縄文人たちは、独自の文化を発展させながらも外部とのつながりを持ち、活発に情報や物資を交換していたのです。
指定文化財としての堂之上遺跡の価値
堂之上遺跡は岐阜県の指定文化財に認定されており、保存・整備が行われています。
その背景には、地域の歴史を後世に伝えるための強い思いがあります。
出土品の多くは地元の資料館に収蔵・展示されており、教育的な価値が高く、学校の郷土学習や観光資源としても活用されています。
堂之上遺跡の見どころ
周辺観光スポット：道の駅とその魅力
堂之上遺跡を訪れる際に便利なのが、近隣の道の駅「飛騨街道なぎさ」です。
ここでは地元で採れた新鮮な野菜や特産品が販売されており、旅行者にとっては休憩スポットであると同時に、飛騨の食文化を体験できる場所でもあります。
遺跡見学の前後に立ち寄れば、地域の魅力をより深く味わえるでしょう。
出土した縄文土器や民俗資料の紹介
堂之上遺跡からは縄文土器が数多く出土しています。
特に火焔型や深鉢型の土器には精緻な文様が刻まれており、縄文人の芸術性の高さを感じることができます。
さらに石鏃（せきぞく）や石斧などの石器も発見され、狩猟や木材加工に利用されていたことがわかります。
これらの資料は展示施設や博物館で一般公開されており、実物を通じて縄文人の暮らしをリアルに学ぶことができます。
発掘調査の成果：何が発見されたのか？
発掘によって見つかったのは土器や石器だけではありません。
食料を保存するために掘られたと考えられる貯蔵穴や、炉跡とみられる痕跡も発見されています。
これらの成果は縄文人の生活に実用的な工夫が多かったことを示しており、単なる狩猟採集社会ではなく、計画的な生活基盤を持っていたことを物語ります。
交流イベントや教育プログラムの実施
堂之上遺跡や関連施設では、地域の子どもたちや観光客を対象としたイベントが行われることもあります。
土器づくり体験、火起こし体験、発掘模擬体験などを通じて、縄文文化を身近に感じられるプログラムが充実しています。
こうした活動は、地域文化の継承と観光振興の両面で重要な役割を果たしています。
訪問のための実用情報
堂之上遺跡へのアクセス：車と公共交通機関
車で訪れる場合は、中部縦貫自動車道・久々野ICから数分でアクセス可能です。
高山市中心部からも約20分程度と便利な立地にあります。公共交通機関を利用する場合は、高山駅からバスに乗り、久々野方面で下車後、徒歩でアクセスできます。
駐車場や施設の案内
遺跡周辺には駐車場が整備されており、自家用車での訪問も安心です。
また、簡易的な案内板や休憩施設もあるため、観光の合間に立ち寄ることも可能です。
訪問時間と開館日情報
展示施設や関連資料館には開館時間や休館日が設定されています。
特に冬季は積雪の影響を受けるため、訪問前に高山市や施設の公式情報を確認しておくことをおすすめします。
堂之上遺跡の周辺エリア
久々野町の歴史と文化を楽しむ
久々野町は飛騨地方の農業の中心地として知られ、リンゴや桃などの果物栽培が盛んです。
秋には収穫体験ができる農園も多く、歴史探訪と合わせて味覚狩りを楽しむことができます。
また、地域の祭りや神社行事も盛んで、縄文時代から続く「人と自然のつながり」を今に伝えています。
高山市の魅力：観光地としての見どころ
高山市は「飛騨の小京都」と称され、江戸時代から続く古い町並みが観光客に人気です。
飛騨牛や郷土料理を堪能できる飲食店、伝統工芸を体験できる施設も充実しており、堂之上遺跡の訪問と組み合わせることで、一日を充実して過ごせます。
飛騨川エリアの自然とアクティビティ
飛騨川は遺跡周辺を流れる清流で、川釣りやラフティングなどのアウトドア体験も可能です。
縄文人も同じ川で魚を捕り、生活の糧としていたと考えられており、現代人が自然を楽しむ姿と重ね合わせて縄文時代を想像するのも魅力のひとつです。
まとめ
堂之上遺跡は、縄文人の暮らしを知るための貴重な窓口です。
竪穴住居跡や土器、石器といった発見物は、単なる古代の遺物ではなく、自然と共生しながら生活していた人々の知恵と工夫を今に伝えています。
周辺の観光スポットや高山市の魅力とあわせて訪れることで、歴史・文化・自然のすべてを体験できる充実した旅となるでしょう。
主な出典元
縄文時代を解き明かす 考古学の新たな挑戦 （岩波ジュニア新書 982） [ 阿部 芳郎 ]
